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何処から?、何者?、何処へ?


by kusini
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Kさんのこと(その3)

Kさんからでした。

 -いまどこにいるの?
 -海雲台の○○ホテル。
 -それなら近くだ、ここから見えるよ。

ベランダに出てみました。
いつも眺めていた岬の上にいたのです。
実家にいたのが弟子にあたる人で、連絡がいって探してくれたらしいのです。

すぐタクシーで向かいました。
湾の端に鉄道の駅があり、そこから岬に向かって登っていきます。
ホテルやレストランや温泉が、木立の中に続きます。

Kさんのいるタルマジギルというのは「月見の丘」という意味で、日の出と入り、月の出と入りが見られる場所として韓国では有名なところだと、妻が教えてくれました。

岬の上は、人がたくさん集まっている公園があり、さらにそこからカフェの並んだ脇の路を昇ったところでKさんは待っていました。

Kさんのマンションは、部屋が全部オンドル式の茶室でした。
それぞれ部屋が、趣味のよい内装で統一されています。
ベランダ側に部屋からは海と月が見えました。
他にはなにもありません。
それは、一歩外に出た賑やかな世界とは別空間でした。

相変わらずひとり身で、テレビもパソコンもクルマもない暮らしだといいました。

私は贅沢だと思いました。
それは、普通の人が得ることも、耐えることもできない孤高の贅沢さです。
もちろん私も普通の人のひとりです。

3人でいろいろなことを話しました。
妻はあっという間の10年間だったといいました。
Kさんは、両親が死んでからここに移って来たといいました。
喫茶店はそのままだし、ここでお弟子さんにお茶を教えているらしいのです。
カナダ人は日本人と結婚して、大阪で翻訳事務所を開いていました。
日本語で話すのは久しぶりといいながら、いつも落ちつた話し方で、完璧な日本語です。

帰りはふたりで歩きました。
長い坂路の途中、月明かりの海がずっと眺められました。

2年後、妻と再び釜山に行く機会ができました。
Kさんのお店は、探しいた所から一区画隣りのビル移動していました。
テーブルや椅子は初めて行ったときと同じものです。
事前に見てきた釜山観光のネット情報や掲示板では、伝統茶の味わえる落ち着いた喫茶店として評判になっていました。

Kさんは地方のお寺に行っていましたが、間に合うように戻って来てくれました。
相変わらず彼とらしい再開のし方だと思いました。

次にKさんのことを語れるのは、いつの日になるかわかりません。
by kusini | 2006-03-05 23:34 | 風景